研究課題
近年、新たな環境汚染物質として注目されている医薬品による水道原水や河川水の汚染状況を東アジア諸国で調査している。発展の著しい東アジア諸国は、数億の人口を有し、生活レベルの向上と、伝染病が多いという亜熱帯的気候条件もあり、多種の医薬品、とくに抗生物質の使用量が上昇している。また、畜産や水産養殖に使用される動物用医薬品も量、種類ともに急増している。東アジア各国では、下水処理施設もあまり普及しておらず、使用された医薬品類は除去されることなく環境中に放出されていると予測される。放出された医薬品類は水域や食料品などを媒体として、世界に拡散していると予想される。また、病院や製薬工場などの排水から環境中に流出する医薬品も多く、耐性菌を始め耐性病原体の発生にも関与していることが懸念される。本年度研究では、比較的環境衛生状態が良い大韓民国で調査を実施した。調査地は大韓民国釜山市で、釜山大学薬学部の協力のもと、市内を流域とする温泉川の河川水の医薬品含量を測定した。温泉川の中流、下流から採水、さらに下流付近にある公共下水処理場の流入水、流出水の測定も行った。今回採水後汚染について調査したところ、医薬品としてはacetaminophen、tolbutamideなど日本と同様に医薬品類が検出された。河川水自体は日本の河川水と同じくらい目視的に濁度もなく、臭気も余り強くなかった。この河川水についての継続調査を行う予定である。さらに、釜山大学薬学部の教員が広島大学薬学部を訪問した。今後さらなる学生、教員による交流を行う予定である。
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