近年、新たな環境汚染物質として注目されている医薬品による河川水などの汚染状況を東アジア諸国で調査した。発展の著しい東アジア諸国は、数億の人口を有し、生活レベルの向上と、伝染病が多いという亜熱帯的気候条件もあり、多種の医薬品、とくに抗生物質の使用量が上昇している。また、畜産や水産養殖に使用される動物用医薬品も量、種類ともに急増している。東アジア各国では、下水処理施設もあまり普及しておらず、使用された医薬品類は除去されることなく環境中に放出されていると予測される。放出された医薬品類は水域や食料品などを媒体として、世界に拡散していると予想される。 本研究の最終年として、これまで行ってきた医薬品の環境汚染調査の解析と現地大学への報告、情報交換を行った。 インドネシア スラバヤ市のエアランガ大学では、調査を実施したスラバヤ川の汚染が問題となり、水道原水としての危険性が指摘されるということがあり、医薬品汚染のみならず、重金属での汚染など工業化に伴う汚染が問題となった。これにより、さらに汚染調査および調査技術者の育成の必要性が高まり、医薬品のみならず重金属類などの測定に関する情報交換なども実施した。 大韓民国 釜山大学との共同研究では、市街地を流域とする温泉川の医薬品汚染調査を実施した。韓国内で使用されている医薬品類が日本と類似していることより、日本と同じ医薬品類がほぼ同レベルで検出されることを明らかとした。本調査は、現地釜山大学のMoon教授の協力もあり共同で継続実施している。
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