研究課題
多因子疾患の感受性遺伝子を見つけ出すためには、多くの場合、(1)ゲノム全域からの関連領域の探索、(2)探し出された領域をより詳しく調べて疾患感受性遺伝子を決定するという2段階の研究実施が必要である。本研究チームが結核症に関して行っている(1)を完成させつつ、(2)の為にアジア諸国における検体収集を強化して、結核の感受性遺伝子を特定する国際的な遺伝疫学研究を研究目的として進めた。ゲノムワイド連鎖解析による3領域の他に、理化学研究所とも共同し、タイ人の検体(再発・治療失敗例120名を含む結核症例444名とコントロール群250名)750検体の他に、バイオバンク日本からの検体も含め、ゲノムワイド関連分析(GWAS:Genome-wide association study)による探索と確認を進めた。若年層で関連遺伝子を一つ同定し論文化し、受諾された(J Hum Genet 2012 in press)。ゲノムワイド関連解析は、数十万個に及ぶ遺伝子多型情報、SNP(single nucleotide polymorphism 単一塩基多型)、のパターンを疾患群と健常群で比較し、疾患関連遺伝子を同定する。しかし、現在使用されている、最も統計学的に有意なSNPのみを見る方法(the "must-significant SNPs/genes" approach)は、多くの偽陽性,偽陰性のSNPsを検出しやすく、生物学的に有意義な発見につながらない可能性も高い。GWASデータにおいて、より意義のある情報を引き出すために、アルバータ大学安井教授との共同研究で、多変量解析の一つであるLogic Regressionを遺伝子レベルでのSNPs応用し、クローン病の公開データにて統計手法の有用性を証明した論文を投稿中である。その特性として、SNP間の相互作用が統計的に検討できる利点が示された。結核菌体と宿主の相互作用を見る上でも同様に有用であり、結核菌体の遺伝子解析の結果と併せ、年齢の要素を入れながら解析している。タイと同様に、菌体も保存している日本の複十字病院でも検体収集について倫理委員会の承認を得て進めている。
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Journal of Human Genetics
巻: 57(提載確定)(印刷中)
Tissue Antigens
巻: 79 ページ: 190-197
doi:10.1111/j.1399-0039.2011.01821.x.Epub2011Dec29
Human Immunology
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