研究課題
日本住血吸虫中間宿主貝の感染を効率的に検出するためのPCR及びLAMP法の応用については、実験室内の予備研究が終了したので当該事項を論文として発表した後、これらの方法の野外サンプルへの応用性のための確認実験を進めた。日本住血吸虫症に関する2010年度中国国内サーベイランスの機会を利用して、揚子江中流地域の中間宿主貝野外サンプルを得て、従来の顕微鏡的検査法とPCR/LAMP法による検出効率について比較を試みた。安徽省、四川省、湖南省、湖北省および雲南省由来の貝サンプルを用いて、50匹の貝から抽出したDNAを鋳型としてPCR/LAMPによる住血吸虫遺伝子の検出を、中国国内流行地の実際の研究室環境を用いて試みた。その結果、中国流行地での実験室環境ではLAMP法に容易にコンタミネーションが発生し、偽陽性結果が多くなることがわかった。PCR法による検出の場合は得られたバンドからの核酸塩基配列による確認が可能であるが、LAMP法による場合は確認試験が困難であり、今後は検査実施環境においてコンタミネーションを防止する方法について検討を行うことの必要性を確認した。当面は蛍光発色検出系を用いて反応時間を短縮して偽陽性の防止を試み、一定の効果が得られている。中間宿主貝の分布動態を簡便にモニタリングする方法も継続して検討した。人工衛星画像情報を用いることにより、中国揚子江流域の中間宿主貝分布に影響する植生、年平均気温、揚子江の水位などのパラメーターが巨視的に分析可能であることを確認し、わが国のALOSシンポジウムで報告した。また、このアプローチにより、気候変動による中国国内の中間宿主貝分布変動にもシミュレーションを実施することが出来、流行拡大に関するリスク評価などにも優れた方法であることを明らかにした。
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American Journal of topical Medicine & Hygiene
巻: 83 ページ: 542-548
Parasitology International
巻: 60 印刷中
Proceedings for the 4^<th>ALOS PI symposium
巻: 印刷中