研究課題
日本住血吸虫症流行撲滅を目前に控えた中国において、正確な感染状況把握と中間宿主貝の生息マップに基づくリスク評価の新しいツール開発を目的に研究を実施した。第一の課題として、感染宿主検出法として用いられる古典的寄生虫学的手法の問題点である感度の低さを克服するべく、遺伝子検出法としてLAMP法の流行現場への導入を検討した。中国安徽省内の流行状態に関する調査データに基づいて様々な流行濃度の地点を選定し、中間宿主貝および終宿主の試料を得て、従来法、個別PCR法、50個の貝同時のLAMP法検査とを比較した。この結果、中間宿主貝の監視のためには遺伝子検出法の感度が優れていること、また流行密度が低下している地域では50個程度の貝を1単位としてDNAを抽出して遺伝子検査をすることで信頼できる近似値を得ることが可能であること、およびLAMP法は流行現場で実施可能であることを明らかにした。しかし、大型家畜動物の場合、糞便や血液ではLAMP法による感染検出試験結果が安定せず、引き続き方法上の改良を加える必要のあることが確認された。第二の課題としては、中間宿主の制圧のために、流行地の土壌分析とGPSによる植生環境因子を加味した貝の生息状況調査を安徽省内で実施し、土壌のカルシウム含量の多寡による中間宿主貝の形態的多様性の存在、およびそのような地域差が流行維持にどのように関わるかについて一定の情報を得た。すなわち、中間宿主貝は生息環境に適応して形態的多様性を形成しており、同じ揚子江流域の流行地であっても、流行フォーカスが異なるとそこに固有の住血吸虫-中間宿主貝相互作用が成立していることが推定され、フォーカス単位の貝の駆除は地域の疾病対策として有効であることが推定された。以上を通じて、中国の日本住血吸虫症流行対策の新規技術の導入と対策戦略について新たな情報が得られ、これからの疾病対策に資する成果となった。
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