研究概要 |
1,タイにおける胆道がんは、肝吸虫の感染がリスクに大きく効いていることを我々は何度も確認してきた。肝吸虫の感染が起きれば胆管では長期にわたった炎症が起きており、これが細胞の新陳代謝を引き起こすことにより発がんに至る可能性がある。そこで、遺伝的な要因として炎症関連の遺伝子多型と胆道がんの発がんリスクとの関連を調べた。 今回は、IL-10という炎症に関連する遺伝子多型を解析した。IL-10の-819番目のTがCに代わっている多型について調べた。2つのアレルの-819番目がともにT/Tを基準として、T/C,C/C,または(T/C)+(C/C)のOdds 比と95%信頼区間を求めたところ、それぞれ0.92(0.47-1.78),1.24(0.49-3.14),および1.0(0.56-1.78)となり、いずれにおいても有意な差は見られなかった。 2,タイの胆道がんのモデル動物としてハムスターが知られている。我々は以前にハムスターのモデルを用いて、ハムスターの胆道がんで高発現しているPRKAR1Aという遺伝子を同定してきた。今回は、それがタイのグループとの共同研究により、ヒトの胆道がんにおいても高発現していることを示すことができ、胆道がんの分子治療の新しい候補となりうることを明らかにした。この成果は論文発表を行うことができた(Int J Cancer: 129,34-44, 2011)。
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