研究概要 |
1) タイ王国の胆道がんでは、寄生虫感染がリスク要因である。しかし感染者のすべてががんになるわけではない。動物実験の結果から、寄生虫と化学発がん物質の両者の投与により胆道がんが起きることが示されている。そのため、化学発がん物質の解毒酵素活性やDNAに起きる変化を修復する活性の遺伝的違いにより発がんのリスクが変化する可能性がある。すでに解毒酵素のGSTT1, GSTM1や、DNA修復酵素のXRCC1, hOGG1について多型との関連を調べたが、いずれも単独ではリスクを説明出来なかった。しかし興味あることに、GSTM1が野生型のヒトの中で、DNA修復酵素hOGG1の変異を持つヒトは、発がんリスクが有意に低下する(p=0.01)という予想外の結果を得た。さらに、hOGG1が野生型の場合に、GSTM1遺伝子を欠損する変異型では発がんリスクが有意に低下する(p=0.01)というこれも予想外の結果が得られた。前者の説明としては、修復酵素の変異型を持つヒトは、細胞毒性が強くて細胞死がおきるためにがんにならない可能性が考えられた。また、後者の可能性としては、食品中のisothiocyanateのような発がん抑制物質が野生型のGSTM1により早く代謝されてしまうためも考えられた。胆道がんに関しての今回の結果は、全く新しいものであり、今後の予防対策を考える上での重要な知見となる可能性がある。 2) タンパク質リン酸化酵素Aのアイソザイムの変換をハムスター胆管がんモデルを用いて調べた結果、肝吸虫感染により誘導される胆管細胞のトランスフォーメーション誘導とその増殖に関わっている可能性がある。また、ECPKAは、ヒト胆管がん発症のバイオマーカーとなる可能性がある。上記の結果は論文発表することが出来た。
|