研究概要 |
我が国の下痢症患者1055検体からカンピロバクター関連細菌の分離・同定を行った結果、45検体からC. jejuni、3検体からC. coliが、1検体からC. curvesと2検体からA. butzleriを分離した。PCR法によるスクリーニングと水素を含む混合ガスを用いたフィルター培養法がカンピロバクター関連細菌を分離するのに有効であると考えられた。タイ、中国の下痢症患者からは、通常の微好気培養でC. jejuni、C. coliとC. fetusを分離した。食肉に関する検査では、タイの牛肉11検体のうち2検体からC. jejuni,9検体からA. butzleri,1検体からA. cryaerophilus、1検体からCampy-like(未同定)を、豚肉11検体のうち1検体からC. jejuni,3検体からC. coli,9検体からA. butzleri、1検体からA. cryaerophilusを、鶏肉20検体のうち17検体からC. jejuni、4検体からC. coli、20検体からA. butzleri、1検体からA. skirroii、1検体からCampy-like(未同定)を分離した。一方、我が国については、牛肉13検体中2検体からC. coli,3検体からC. fetus,5検体からA. buztleri,4検体からA.cryaerophilusを、豚肉10検体中2検体からA. butzleriを,鶏肉6検体中4検体からC. jejuni、6検体からA. butzleriを分離した。薬剤耐性について調べた結果、A. butzleriはタイ、中国、我が国ともセファロチンに対して90-100%と非常に高い耐性率を示し、次いでアンピシリンとクリンダマイシンで高い耐性率であった。タイではアジスロマイシンに我が国ではクロラムフェニコールに対する耐性率も高かった。我が国で分離されたC. jejuniはナリジクス酸やシプロフロキサシンに対する耐性率が100%と高かったが、それ以外は比較的感受性であった。タイでは、この2薬剤に加えレボフロキサシンに対しても60%と高い耐性率であった。以上の結果より、3国間における食肉の汚染率、汚染菌の種類や分離菌の薬剤感受性パターンが異なることが明らかとなった。
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