研究課題
前年度の研究に引き続き、トリクロロエチレン曝露健康労働者と全身性皮膚一肝障害患者のサンプル収集を行った。今年度は90名の健康労働者、2名の患者の血液と尿を採取した。尿中トリクロロエチレンの代謝物はGC/MSで測定した。血液は血清と血球部分に分離し、血清を用いてIL10とTNFαを測定した。血球部分からDNAを抽出し、HHV6、およびHLA-Bの多型を解析した。健康労働者の結果を記す。尿中代謝物のうちトリクロロ酢酸は18~1,488mg/L、トリクロロエタノールは0~669mg/Lであった。日本産業衛生学会のトリクロロ酢酸の生物学的許容値(50mg/L)を超えている労働者は19名おり、これらの労働者は日本産業衛生学会が定めるトリクロロエチレンの許容濃度を超えた労働現場で作業をしていたと考えられた。TNFαとIL10のカットオフ値を超えた労働者はそれぞれ4名、2名であった。HHV6の陽性者は4名であった。HLAの多型解析をした。HLA-B*4601が12名で最も多く、次いで、HLA-B*4001が10名、HLA-B*5101が8名、HLA-B*5502が6名、HLA-B*1502とHLA-B*1302がそれぞれ5名であった。トリクロロエチレンに対して感受性が高いことが報告されているHLA-B*1301多型はたった2名であった。この結果は注目すべきである。即ち、健康労働者、つまりトリクロロエチレンを少なくとも3カ月以上使用していても全身性皮膚-肝障害にり患しなかった労働者のHLA-B*1301多型は極めて低いことである。今後さらにサンプル収集を継続し、HLA-B*1301がトリクロロエチレンの感受性遺伝子となりうるか、またトリクロロエチレン曝露との関連性を明らかにしたい。
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Environmental Health Perspective
巻: 118(11) ページ: 1557-1563