研究課題
1) 60人の女性労働者および同数の年齢をマッチングさせた女性労働者のデータを解析した。曝露群を1-ブロモプロパン(1BP)個人曝露量をもとに低濃度、中濃度、高濃度曝露の三つの群に分け、分散分析およびダネットの多重比較法を用いて、曝露群間の神経伝導速度(運動神経伝導速度、遠位潜時、感覚神経伝導速度、F波伝導速度、感情プロフィール、WHO神経行動学テストバッテリー、重心動揺計によるスコア、振動覚、生化学検査データ、血液学的データの比較を行った。さらに、曝露濃度に対する回帰分析を行った。その結果、遠位潜時、振動覚閾値、LDH、TSH、FSHの量依存的上昇、感覚神経伝導速度、赤血球数、ヘマトクリットの量依存的低下が示された。2) 1BPを含む溶剤がディーゼル車内の高温状態にあるギアーボックスにかけられた。その結果、瞬時に1BPが気化、凝集し、一人の労働者が1BPのミストを吸引した。所見:下肢振動覚低下、四肢の無感覚、ロンベルグ陰性、両側膝かかと試験陽性、両側指鼻試験陰性、両側拮抗運動反復不全、失調歩行、四肢筋力低下、上肢腱反射低下、下肢腱反射亢進、下肢振動覚低下。下痢症状あり。尿中モノクローナル免疫グロブリン(Bence Johnes蛋白を含む)陰性。下肢感覚神経伝導速度測定において、Amplitudeの減少はあるも、伝導速度の低下は観察されなかった。頭痛、記憶障害、抑うつ症状あり。曝露1年以上経過するも開脚歩行、無感覚症状持続している。本症例は、これまでに発見された米国症例に比して、曝露期間は短いものの、高濃度の1BPに曝露されたと考えられる。短期、高濃度曝露によっても、これまでの症例と類似した中枢神経、末梢神経障害が引き起こされることがわかった。
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