研究課題
本申請課題の目的は、代表者ならびに分担者が長期間の人類生態学調査の経験をもつパプアニューギニアと中国・海南島の集団を対象に、それぞれの地域生態系における人為由来の化学物質のフローを記述的に整理し、環境サンプル(水、食品など)と生体試料サンプル(尿、濾紙血、毛髪、唾液)の収集と分析により、人為由来の化学物質の生体曝露量を評価し、また複数の指標による健康影響の評価をおこなうことである。近代化の初期段階にある集団を対象に、生態系の全体を視野に入れた研究をおこなうことで、生態系内への人為的化学物質の拡散パタンと人間への健康影響にかかわる基礎的なエビデンスを提供することを目指す。2009年度は、7月に英国マンチェスターで開催された国際人類生態学会に参加し、当該研究課題にかかわる最新の知見についての収集をおこなった。8-9月にパプアニューギニアを訪問し、マプリックとブーゲンビル島において現地情報の収集と現地スタッフのトレーニングをおこなった。現地調査には、代表者に加えて大学院1名が参加し、分担者の渡辺・有薗は日本にて調査のバックアップをおこなった。パプアニューギニア医学研究所の研究者および彼らの指導する常勤スタッフの協力を得た。2009年度は、調査地における準備が整わなかったこともありサンプル収集はおこなわなかったものの、対象地域に居住する住民の情報収集(住民リストの作成、化学物質利用の実態、生業変容の記述)を精力的にすすめた。また、パプアニューギニア医学研究所に保管してあったゴロカ地域の住民の唾液サンプルをドライシッパーで日本の実験室に輸送し、コルチゾールの分析を進めたほか、パプアニューギニア・ゴロカ地域とマダン地域の尿サンプルを対象に、ICP-MSによる元素分析をおこなった。熊本県立大学に所属する分担者は、NAGINATAシステムを用いた800種類の化学物質の半定量分析の精度向上のための条件検討をすすめるとともに、実際の尿サンプルを対象にした分析をすすめた。
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Toxicology (印刷中, 掲載確定)
Villagers in the City : Melanesian Experiences of Port Moresby, Papua New Guinea(Sean Kingston Press)
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