開発途上国では、社会経済的な格差が入手可能な食品や生活環境の格差をもたらし、リケッツ罹患やその他の子どもの社会的健康格差に関係していることが予想されている。本研究の目的は、(1)開発途上国における子どものリケッツ罹患が成長後の健康、生活の質にもたらす影響、(2)疾病予防と疾病治療における医薬品の購買行動と社会経済水準の関係、(3)開発途上国における社会経済水準の格差と子どもの健康格差との関係を明らかにし、(4)健康格差を縮小する総合的な対策に提案することである。 (1)モンゴル国ウランバートル市およびダルハン県の2001年から2011年の環境条件の変化に関する調査を行った。(2)タイ国における喫煙と社会経済水準の関連性の変化について解析し、全体の喫煙率は低下しているが、10代から20代の年齢層では喫煙習慣の社会格差が縮小しておらず、若年の低社会階層の喫煙率の減少をみていないことが明らかになった。健康推進政策により健康の社会格差が増大する危険性が示唆された。(3)カンボジアにおけるこどもの食品摂取と栄養状態および社会格差に関する解析し、食品摂取と社会階層の関係を明らかにした。摂取食品の多様性よりも、タンパク質接種の有無が、こどもの低身長と有意な負の関係を示すことを明らかにした。生活環境と社会経済水準をふまえた栄養指導の必要性が示唆された。(4)開発途上国における経済格差と健康に関するヘルスプロモーション理論の検証を行い、社会経済条件と健康水準、生活習慣、健康支援環境との関係をふまえた健康推進政策が不可欠で、一律の健康推進政策による格差の拡大の可能性が示唆された。
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