研究課題
本研究では、口腔がんの発生機序におけるDNAメチル化異常の関与を明らかとするために、噛みタバコの習慣にて白板症~口腔癌の多発する東南アジアをフィールドとして、口腔粘膜のDNAメチル化異常と病変発症との関連性を検証することを目的としている。このために、国内口腔癌で高率に検出しているp16INKA4、MGMT遺伝子プロモーター領域のメチル化異常をTargetに東南アジア地域で擦過標本の集積と国内症例を用いた擦過標本と組織標本との相関性(擦過標本の信頼性)を検討して来た。また、口腔発がんモデルであるラット4NQO舌がんモデルでの類似性の検証を行っている。これまでの成果:1.擦過標本と組織標本間の相関性については、擦過標本と組織標本(手術前の擦過標本と摘出組織標本の比較)において、ではほぼ同等の頻度でメチル化異常が検出されたが、MGMTでは顕出頻度が低値であったこともあり信頼性に乏しい結果となっている(その他RRECK等も信頼性・相関性が乏しかった)。これらのことより今後はp16INKA4に的を絞ることが重要と考えられた(日本がん予防学会・口腔外科学会報告)。2.上記の結果を基に、高雄医科大学(台湾)において採取された擦過標本約50例をパイロシーケンス法にて解析した所、感度が高いはずである本法においてバンド法に比べp16INKA4、MGMTとも低値(陽性率10%程度)となり、もう少し例数を増やし解析する必要があると考えている。3.口腔がん患者の血清中のメチル化異常DNA断片を検索した所、p16メチル化異常を観察する原発組織16例中の患者血清で13例において同様のメチル化異常が検出され、担癌markerとして有望と考えられたが、術後3ケ月(非担癌と考えられる状態)の血清でも高値のままであり、半年・1年後の血清を解析する必要に迫られている。
2: おおむね順調に進展している
本研究において最も重要な海外施設との協力体制も整備され海外サンプルが集積されて来ている。また、国内例を用いた擦過標の信頼性も証明出来、学会発表可能な所まで解析が進んでいる。しかしながら、より高感度のメチル化異常の検出方法であるパイロシーケンス法での検出頻度が低く、原因を含め改善の余地がある。また、この結果、成果を論文発表するのが遅れており、次年度以降に向けた更なる努力の傾注が必要となっている。
達成度の項目でも記載した様に、本研究において最も重要な海外施設との協力体制の整備と海外サンプルの集積がなされていること、解析のカギとなる標的とするメチル化異常遺伝子の絞り込みと標本の信頼性が確認されていることより、基本的に計画どうりに進行可能と考えている。
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PLoS One. 2012;7(8):e44488. Epub 2012 Aug 30.
巻: 8 ページ: e44488