研究概要 |
本研究では,グラフ問題の中でも特に重要な,グラフの分割,彩色,描画問題に的を絞り,それらの最適解を求めるアルゴリズムや近似解を求めるアルゴリズムなどを開発するとともに,具体的な現実問題への展開をはかった. まず分割では,需要・供給分割問題を一般グラフに対し擬多項式時間で解くアルゴリズムを設計した.供給点が1個しかない場合には直並列グラフや部分k木に対してFPTAS(完全多項式時間近似スキーム)が存在することを示した.また,均等分割問題を一般グラフに対し擬多項式時間で解くアルゴリズムを設計するとともに,木に対しては多項式時間アルゴリズムを開発した. 次に彩色では,リスト辺彩色が存在するための十分条件を求めるとともに,その条件を満たすならばリスト辺彩色を効率よく求めるアルゴリズムを開発した.また,木の最小コスト辺彩色を求める問題がグラフのマッチングを応用して解けることを示し,極めて高速なアルゴリズムを設計した. 最後に描画については,VLSIのレイアウトの配線や略地図作成などに現れるグラフ描画を扱った.VLSIのレイアウトでは数千個ものモジュールをVLSIチップ上にうまく配置して,配線で結ばれるモジュールは互いに隣接させ,しかも各モジュールの面積要求も満足させたい.本研究では,内部矩形描画,面積指定8角形描画,折れ曲り数最小直交描画の他に,開矩形勢力描画という新しい描画形式を定式化し,それらが存在するための必要十分条件を求めた.開矩形勢力描画では,直線分で描画された各辺によって定義される軸平行長方形内に他の点が存在しなく,見易い描画である.この開矩形勢力描画を求める線形時間アルゴリズムを求めた.
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