研究概要 |
本研究の目標のひとつは、従来の素因数分解問題(IF)や離散対数問題(DL)をベースにしつつも、量子計算機では効率的に解けるとは知られていない別の問題Qを融合させることにより新しい問題を構成し、それに基づく暗号化関数を構築することである。そのような問題を仮にIF*Q,DL*Qと呼ぶことにする。IFもQもそれぞれIF*Qに多項式時間帰着するが、IF*QはIFやQには多項式時間帰着しそうもない形にすることが重要である(DL*Qについても同様)。すなわち、QによってIFやDLの難しさを、量子計算機による効率的解法が及ばない領域に持ち上げる(本研究で「リフティング」と呼ぶ)技術を開発することになる。ただし、暗号への応用が最終目標であるから、IF*QやDL*Qの難しさはNPMVやNPを超えないように工夫する必要がある。 平成21年度は、上記のQを具体的にどのように組織的に融合させるかを明らかにするため、IFやDLの難しさとNPMV完全な関数、NP完全な集合との関係を改めて分析した。その結果、IFやDLから直接的に帰着するNPMV完全な関数の発見(本研究代表者:平成20年)に続き、IFやDLに対応る集合から直接的に帰着するNP完全集合を発見した。NPMV完全な関数(ないしNP完全集合)と元の問題の間には中間的な難しさの問題が無数にあり、それらがIFやDLを持ち上げる際にQの融合相手(候補)として利用可能となったことを意味する。これらの成果については投稿原稿の準備が完了した状態である。 そのほか、IFやDLの難しさそのものを掘り下げた研究成果を2件、公表した。
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