研究概要 |
本研究は,論理回路をはじめとする各種の計算モデルに対して,計算機援用型の計算困難性証明手法の確立を目指すものである.本年度の研究実績は主に以下の4点である. 1.論理関数の多項式しきい値表現について研究を行い,平均表現長を計算機援用のもとに求める新たな手法を開発した.また本手法を用いて,論理関数の平均多項式しきい値密度に対する,従来知られる最良の上界を改良することに成功した.この結果を国際会議ISAACにおいて発表した. 2.定数段数論理回路モデルについて,最近Rossmanによって新たに開発された下界証明手法を用いて示されたクリーク関数の下界が,既にタイトであることを,下界サイズにマッチする論理回路を具体的に構成することにより示した.本結果を,国際学術論文誌Computational Complexityにおいて発表した. 3.論理関数の平均感受度と呼ばれる尺度について,対象となる関数が幅をkに制限した和積論理式(k-CNF式)によって表現可能である場合には,その平均感受度が高々kであることを証明し,O'Donnellによる未解決問題を解決した.本結果は国際学術論文誌Theory of Computingに掲載された. 4.本研究によってこれまで開発して来た計算機援用型の計算量評価手法について,欧州の理論計算機科学分野の権威ある団体であるEATCSより,これらの手法をまとめたサーベイ論文の寄稿を求められ,これをBulletin of EATCSにおいて発表した.
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