研究概要 |
平成23年度は以下の成果を得た。 1.確率分布の分散を反映した流体化近似手法の開発:指数分布の発火遅延時間をもつ一般化確率ペトリネットにおいて,各プレースの確率分布の分散を,流体化モデルにおけるトランジションの区間発火速度で代替的に表現する方法を開発した。具体的には,平均μ,分散σ^2の確率分布を,区間[μ-rσ,μ+rσ](rは区間幅を指定するパラメータ)の形で計算するための発火速度の区間を具体的に与えるための方法を考案した。提案手法は,各プレースのトークン数の分布がすべて独立であるとき正しいシミュレーション結果を与える。しかし,各プレースのトークン数の分布は一般には従属であるため,それを補完する情報としてプレースインバリアントを利用する方法を提案した。計算機実験の結果,厳密な手法では300秒以上かかった計算を1秒以内で実行するなど,提案手法の有効性が確認された。 2.ハイブリッドシステムの述語抽象化の高速化に関する研究:流体化モデルはハイブリッドシステムの形で表現できる。流体化モデルのシミュレーションを高速に行うための方法として述語抽象化に着目し,計算の高速化のための新しい近似手法を開発した。述語抽象化とは,状態空間を与えられた述語集合により分割し,その上の離散的状態遷移で近似する手法である.しかし,述語により抽象化された状態空間は述語数の指数関数的な数の離散状態を含むため,計算の効率化が必要である.平成21-22年度は,2次元の状態空間に対して箱抽象化(Box Abstraction)の高速化に関する研究を行ったが,23年度は多次元への拡張を行い,計算機実験により有効性を確認した。
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