研究概要 |
主にグラフの次数制限モデル上の準線形時間アルゴリズムについて研究をし、以下の成果を得た。まずグラフの節点を一様ランダム抽出し、その周りを探索することによって独立集合を求めるアルゴリズムについて、探索方法をランダム探索では無く、最良値探索を導入することで、従来のものより高速なアルゴリズムを得た。具体的には、節点数n、次数上限dのグラフに関して、極大マッチングの(1,εn)近似を0(d^4/ε^2)時間で得ることができる。これは2008年のFOCSでNguyenとOnakの与えた算法の計算時間が0(2^0(d)/ε^2)時間と、dに関して指数だったのを多項式にした点で画期的である。このアルゴリズムを用いることで、最小節点被覆の(2,εn)近似を同じ計算時間で得ることができるほか、さらに本アルゴリズムをサブルーチンとして用いることで、最大マッチングの(1,εn)近似をd^0(1/ε^2)(1/ε)^0(1/ε)時間で求めることができる。これは上記の従来算法ではガd^0(1/ε)時間であったものをやはり指数的に改善している。なお、このアルゴリズムの改良自体は単純であるが、その計算時間を正しく評価するのは難解であった。この結果はSTOC2009に採録され、高く評価されている。また、性質検査の下界値についても成果をあげた。この分野では有用な帰着法の開発が研究分野の進捗に対する重要な鍵となるが、我々はクエリ数を線形の範囲で保存する2種類の新たな帰着法である「強間隔保存局所帰着(strong gap-preserving local reduction)」と「強L帰着(strong Lreduction)」を提案し、それを用いて、「3辺彩色」「有向(無向)ハミルトン閉路」「3次元マッチング」「Schaeferの3SATの諸問題」の各問の次数制限版での検査がすべて線形数のクエリを必要とすることを証明した。
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