研究概要 |
本研究の目的は,代数的手法に基づき,1次元セルラーオートマトンのための,状態数が世界で最少の同期アルゴリズム(FSSP : Firing Squad Synchronization Problem,プロトコルとも呼ばれる)を開発し,多次元アレイ結合セルラーオートマトン上への応用を目指すものである. 本年度は,昨年度に引き続き代数的セルラーオートマトンをベースとする1次元リングアレイ上での4状態解を探索し,新しい解が存在することを明らかにした.最適時間アルゴリズム並びに線形時間アルゴリズムの設計,初期の将軍状態の位置を任意に設定する一般化FSSP問題に対して.これらの構造の一端は解明されつつある.とくにセル数n=2^<k+1>"-1,k=1,2,3,...,のリング結合セル空間上で定義される複数個のFSSP解は,これまでに明らかにしたものとは違った動作をし,今後その詳細の解明が期待される.現在全容の解明には至っていない.試算ではさまざまなタイプの1次元アレイ上のFSSP問題に対しても,多数の4状態解の存在を把握している.また2次元正方形アレイ上での4状態解の存在を明確にする. FSSP解を特徴づけるCellular Automatonの性質として, Number-Conserving CA, Inner-Independent CAを考案し,これらのCA上で動作するFSSP解の設計に成功する.一部はすでに今年度中国で開催された国際会議にて発表しているが,23年度にその詳細を公表する予定である.多次元アレイについても同様な考察を行い,解の存在を把握した. 次に2次元アレイ上における最適時間解を統一的な観点から見直し,整理する.これらは国際会議で公表された.さらに新しいタイプのFSSPアルゴリズムを開発する.これは2次元アレイを回転型L字アレイに分割し,それらの上で通常の1次元FSSPアルゴリズムを動作させるものであり,フランスで開催された国際会議HPCS 2010にて発表された.正方形アレイに対してUmeo et al. [2002, LNCS 2493]の9状態アルゴリズムが最小のものとして知られているが,新たなZebra Mapping手法を適用することにより,より状態数の少ない7状態のFSSP解が得られた.このFSSP解はイタリアで開催したセルラーオートマトンの国際会議で発表され,現在論文として発表すべく準備中である.また2次元,3次元アレイに対して再帰的2分割マーキングを利用することにより,従来から知られていたアルゴリズムとは全く違った動機アルゴリズムの開発に成功した.同アルゴリズムの計算機上への実装を行い,384状態,112690個の遷移ルールから構成されることが判明した.本結果は23年度の国際会議で公表される予定である さらに代数的手法と従来から知られている幾何学的な手法を併用し,両者の利点を生かしたFSSPアルゴリズムの設計に着手し,本テーマは昨年度から継続して進行中である.申請者が先にUmeo and Kamikawa [2002, 2003], Umeo et al. [2007]等で提案している1-Bit CA(隣接するセル間で1ビット/1ステップの情報交換が可能なセルラーオートマトンで,従来から数多くの研究がなされているセルラーオートマトンのサブクラスに位置する)上で代数的な手法に基づくFSSPアルゴリズムを設計する.これに関して,最適時間解,線形時間解,正方形アレイに対するFSSP解が得られ,23年度に国際会議に手公表する予定である.1-Bit CAは1ステップあたりのセル間の通信容量が1-bitに制限されているにもかかわらず,Umeo and Kamikawa [2002, 2003], Umeo et al. [2007]において,素数,Fibonacci数列など従来から実時間生成が非常に困難とされてきた数列の生成問題が1-bit通信のみでも実時間で生成可能であることを明らかにした.現在の探索は最小状態数の解に近づきつつあるものと考えている.実時間素数生成に関しては,従来よりも大幅に状態数を削減することに成功し,更なる改良を行っている
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