研究概要 |
本年度は,阪南大学の教育支援システムの要求提示資料を調査し,定量的な分析を行った.これまで,開発者が想定していた事象が実際に生じていたことを,要求者へのインタビューによって明らかにすることができた.この成果は,今後,開発プロジェクトにおいて,要求者の組織内での要求確定プロセスを注視する必要があることを示したと言う点で,研究の有効性を示している. また,阪南大学の調査結果を用いて,ソフトウェア品質成長モデルの適用を試みた.その結果,統計モデルによって,要求獲得プロセスを説明できることが明らかとなった.この成果によって,今後,要求獲得活動の計画と監視,評価を定量的に行うことが可能となる.定性的な要求獲得活動に関するこれまでの研究に対して,定量的な評価基準を示すことが出来たのは,画期的な成果であると言える.この成果は,国際会議の論文として投稿中である. 今期のもう一つのテーマである要求獲得プロセスの定量的調査の方法は,観測のガイドラインとしてまとめた. 連携研究者と共に,要求獲得が遅延した場合でもソフトウェアの開発プロジェクトを失敗させないためのリスクへ対処する知見を収集し,それを体系化するためのフレームワークを開発した.このフレームワークは,プロジェクトマネジメント知識体系で用いられている知識レベル,およびプロセスレベルという二次元の行列で構成されている.今後,さらに事例の調査を進め,知見の収集を進めていく予定である.この研究成果は2度の国際会議で発表した. さらに,本研究で開発中している要求獲得プロセスモデルを正式にPRINCEモデルと名付け,数社の企業に対して,実態調査を依頼し評価を行った.この研究は,プロジェクト第二期の研究内容を前倒しで行ったものである.評価結果は報告書としてまとめ,公開する予定である.
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