研究概要 |
本研究の目的は,情報表示の手段としてのグラフ描画アルゴリズムの有効性を向上させるため,以下の三つの課題に対して有効なアルゴリズムを開発することである. 課題A:頂点の大まかな位置が指定されたグラフの描画アルゴリズムの設計 課題B:非連結グラフの描画アルゴリズムの設計 課題C:頂点の形状とサイズが指定されたときのグラフ描画アルゴリズムの設計 課題B,Cについては平成22年度までに一応の成果が得られていたため,平成23年度は課題Aに重点を置いて研究を行った.平成23年度に得た主な成果は以下のとおりである. 1.有向グラフの描画形態として,階層描画が広く用いられている.そこで,平成22年度に,課題Aに関する一研究として,グラフの頂点が階層に分割されており,各階層上の頂点の配置順序が指定されている場合について,頂点の座標を決定する新しい方法を設計した.この方法は,各頂点を点で表し,各辺を直線で描く場合のものであった.平成23年度には,このアルゴリズムをもとにして,各辺を垂直・水平線分からなる折れ線で描き,異なる辺による線分の共有を許す場合についての頂点座標決定法を開発した.また,課題A,Cの両方に関わる結果として,各頂点を軸平行長方形で表し,各辺を直線で描く場合の頂点座標決定法も作成した. 2.階層描画を行う際に作成されるダミー頂点の個数を大幅に削減し,簡潔な描画を得るための一手段として,ダミー頂点の共有化と呼ぶ処理を考えた.この処理を行ってダミー頂点の個数を最小にする問題,及びグラフの辺数を最小にする問題がいずれもNP困難であることを示すと共に,これらの問題に対する発見的手法を提案した. 3.無向グラフの描画が与えられたときに,そこにおける頂点の位置関係を概ね保存しながら描画の質を向上させるアルゴリズムを開発し,手描き描画を用いた計算機実験により有効性を示した.
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