研究概要 |
本研究はシステムの複雑さに影響を与えるマイクロプロセスの自動検出とそれを警告する開発環境の開発である.昨年度まではプロセスの複雑さとプロダクトの品質の関係を示すPCPQモデルを提案した.今年度はPCPQモデルの正しさを検証するために産業界の8つのプロジェクトからデータを収集した.収集したデータは工程管理表とリリース後のバグ管理票であり-工程管理表からプロダクトの品質に影響を与えるマイクロプロセスの自動検出を行い,さらにマイクロプロセスから開発プロセス全体の複雑さを求め,その複雑さの値とプロダクトの品質の関係を検証した.その結果,プロセスの複雑さとプロダクトの品質の間には有意な相関関係が確認された.新規のプロジェクトの進行中に計測したマイクロプロセスからのプロセスの複雑さから将来のプロダクトの品質を予測することができた. 8つのプロジェクトの工程管理表からは個々の作業をマイクロプロセスとし,その変更履歴を記録することでマイクロプロセスの変化をプロセスの複雑さとして計測を行った.プロジェクトの時系列のプロセスの複雑さの増加の様子を計測することができ,それを3D化するツールを作成したので,マイクロプロセスを含むプロセスの複雑さの変化を可視的に直観的に把握することができた.さらに,危険レベルのプロセスの複雑さの値を設定することで,自動的にプロダクト品質への危険性を警告することができた.さらに,対象プロジェクトの工程管理表でのデータ収集と分析を進めるとともに,その研究成果を国際学会と国内学会で発表し,さらに論文誌へ投稿した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ソースコードなどのプロダクトの複雑さに影響を与えるマイクロプロセスを工程管理表からプロセスの複雑さというメトリクスをつかって特定することができた.さらに,それを自動計測し可視化するツールなどを組み込んだ開発環境を作ることで,プロダクトへの悪影響発生の可能性を警告できる環境が開発できたので,概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではプロダクトの品質に影響を与えるマイクロプロセスを抽出することができたが,その結果わかったことはシステム開発の上流工程でのプロセスの品質が最終プロダクトの品質に大きく影響を与えることが明確になった.したがって,今後は,ソースコード作成の下流工程ではなく,上流工程のマイクロプロセスに焦点を絞る.特に,要件定義工程の重要な作業である顧客とシステムエンジニアとのミーティングでのマイクロプロセスに焦点を絞り,そのミーティングプロセスとプロダクトの品質の関係をさらに追及する.これによって,大きくプロダクトの品質に影響を与えるマイクロプロセスの検出を実施する.
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