時間領域に情報を有するパルス幅変調(PWM)方式、パルス位置変調(PPM)方式および高効率なデータ符号化方式に基づくスケーラブルな微細MOS回路技術の基本構成要素の検討とその高速信号伝送技術への応用に関する検討を行い、「配線設計主体の集積回路の高性能化」の有効性を検証した。H23年度の主な研究成果は以下の2点にまとめられる。 1.パルス幅変調(PWM)方式に基づく2次プリエンファシス(PE)技術の考察とFPGAによる実装 VLSIの極限微細化・高速化・低電圧化に伴う劣化信号を補正するための波形等化技術として、これまで筆者らが提案してきた時間軸で情報を表現するパルス幅変調PE技術の高性能化を検討した。特に、高次の劣化特性を有する伝送路における波形整形を目的として、パルス幅変調PE技術の2次方式への拡張を検討した。さらに、伝送路の帯域制限により劣化した波形に対する波形整形能力を検証するために、2次PEドライバをFPGAで実装を行った。その結果、提案方式は、従来の1次PE実現と比較して波形整形能力が高く、特にジッタ特性の改善が可能であることを明らかにした。 2.パルス位置変調(PPM)方式に基づく高速信号伝送と多値PPM伝送方式への応用 パルス位置変調はパルスの立ち上がりタイミングの位置で情報を表現し伝送するため、遅延回路(インバータ)等のディジタル回路で構成され、微細化により時間分解能の精度向上が可能な方式であるが、多ビット伝送を実現する場合、高精度な時間分解能が必要となり、時間差検出回路の実現が困難となる。そこで、PPM信号の振幅を多値化することにより、時間領域と振幅領域を用いた2次元情報表現方式を新たに提案し、回路シミュレーションを用いて実現に関する基礎的考察を行い、有効性を検討した。
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