研究概要 |
システム・イン・パッケージ(SiP)の抵抗,キャパシタンス、インダクタンス成分を抽出する方法について検討を行った。境界要素法に従うと、導体をメッシュに分割、各導体間の距離によって定まるグリーン関数を用いることで電位係数行列が求められる。この逆行列がキャパシタンス行列である。しかしながら,SiPの全領域に本手法を適用するとキャパシタンス行列は密行列となり、回路シミュレーションの演算効率が著しく低下する。そこで,疎なキャパシタンス行列を求めることを考えた。近隣と重なった部分を持つ領域を定義し、局所的なキャパシタンス行列を求める。次に、局所的に得られたキャパシタンス行列をコレスキー分解し,全体でのコレスキー要素を、各領域で得られたものを重ね合わせることで得た。ここで、要素が重なる部分に関してはどちらか一方の行列の要素を採用した。全体としてのキャパシタンス行列は疎なコレスキー要素とその転置行列との積で表され、疎であるばかりでなく正定性(安定性)も保証される。本手法における局所的なキャパシタンス成分の計算は、各領域で独立な演算であり並列化が可能となった。インダクタンス行列に関しても同様の手順で疎な行列を作成した。ただし、インダクタンス行列は各導体間の距離によって定まるグリーン関数を積分することで得られ、逆行列演算が必要でない点がキャパシタンス行列の作成とは異なる。本手法におけるキャパシタンス行列の作成は、安定かつ疎な近似逆行列の生成に基づいている。インダクタンス行列の場合は係数行列を疎に近似したことに相当する。これらは、連立方程式の反復解法における前処理技術の一種と考えられる。また,数値解析分野で、安定かつ疎な逆行列、係数行列を作成する方法が知られており、この方法を用いてインダクタンス、キャパシタンス行列を作成する方法を検討した。
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