研究概要 |
1本基盤研究は,次世代の超高速・超広帯域モバイルネットワークを実現するための屋内電波伝搬推定および回線設計を可能にする技術の開発を目的としている.平成21年度は,時間領域差分(FDTD)法に基づく電波伝搬特性推定のための,大規模かつ高速な解析を実現するソフトウエアの開発を行った.解析ソフトウエアには,解析対象を任意の座標軸方向に領域分割して並列計算するための手法,軸方向に長い解析モデルの高精度解析を実現するためのCPML吸収境界条件の実装を行った.また,波源として,建物侵入波および無線送受信用アンテナの解析的取り扱いを可能にしたことで,ほとんどの無線環境での解析に対応した. 2電波伝搬特性推定の評価に有効な次に示す3種類の高精度数値解析モデルの開発を行い,数値解析と実験結果との比較検討に適用した.(1)本学情報科学研究科棟9階フロア,(2)本学情報基盤センター北館2階から4階,(3)市街地モデル.前述の解析モデル(1)および(2)は,いずれも2.4GHz帯センサネットワークおよび無線LANシステムに適用するため空間分解能10mmで製作し,床下,天井裏および壁面内部の構造と建築材料のモデリングを行った.また,前述の解析モデル(3)は空間分解能50mmとした. 3上記1および2で開発を行った解析ソフトウエアおよび解析モデルを用いた数値シミュレーションを行い,その結果を実験結果と比較することで,開発した解析ソフトウエアと解析モデルの有効性を検証した.センサネットワークの伝搬特性について,解析結果は実験結果をよく推定することを明らかにした.市街地伝搬特性推定では,これまでレイトレーショング法では困難であったUHF帯での解析が,本提案手法を利用することで可能であることを示した.無線LAN伝搬特性解析では,実験結果との比較検討から,無線LAN装置設置場所の他に隣接する部屋内部の金属製什器などを考慮すべきであることを明らかにした.
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