研究概要 |
1 本基盤研究は,超高速・超広帯域モバイルネットワークを実現するための屋内電波伝搬推定および回線設計を可能にする技術の開発を目的としている.平成22年度は,前年度開発を行った時間領域差分(FDTD)法に基づく電波伝搬特性推定用ソフトウエアの有効性を確認するため,IEEE802.11n規格に基づく市販の無線LANシステムを利用した測定結果との比較検討を行った.さらに,屋内伝搬特性推定のための設計法を提案した. 2 2.4GHz帯における屋内伝搬特性の測定を次の3種類の環境で行った.(1)大規模オフィス環境(本学情報科学研究科棟9階と2階),(2)一般的なオフィス環境(本学情報基盤センター北館2階から4階),(3)戸建住宅.はじめに,測定手法および特性評価方法について提案を行った.測定に利用した市販品の特性は受信電界強度とスループットが線形な関係にあることを明らかにした.導出した直線の式は上記屋内環境すべてに対して同一である.これは,市販品ではデザインおよびコストの観点から無線LAN機器に寸法などの物理的な制約があり,期待されるMIMO特性が十分実現されていないためである.また,測定結果を推定可能な数値モデルを開発し,計算機シミュレーションにより屋内の任意の場所での電界強度値を推定することで,近似式を利用したスループット値の推定法を提案した. 3 5GHz帯における屋内伝搬特性について,上記(2)および(3)の環境における測定を行った.その結果,受信電界強度とスループットの関係は直線の周囲に分布することが明らかになった.これは,波長が短くなったことによって市販品においてもIEEE802.11n規格に基づくMIMO OFDMの伝送特性が得られていることを意味する.今後,数値シミュレーションのためのソフトウエアに,広帯域伝送特性の評価手法を実装する予定である.
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