研究概要 |
(1)本基盤研究は,次世代の超高速・超広帯域モバイルネットワークを実現するための屋内電波伝搬特性推定および無線回線設計を可能にする技術の開発を目的としている.平成23年度は本研究で開発を行った時間領域差分(FDTD)法に基づく電波伝搬特性推定ソフトウエアについて,MIMO-OFDM通信方式の特性評価に有効な遅延プロファイルおよび遅延スプレッドを定量的に推定する計算アルゴリズムを提案し,その実装を行った.提案手法は,時間領域解析データと可視化システムを組み合わせて,観測面内の任意の点を指定することで遅延プロファイルを描画し,同時に遅延時間を決定する.その手法を戸建住宅モデルに適用し,シミュレーション結果の妥当性について議論した. (2)平成23年11月からは,理論ピーク性能172TFlops,総主記憶容量17TBの大型計算機システムが利用可能になったことから,本研究で開発を行った解析ソフトウエアの移植とチューニングを行った.4倍以上の高速化を実現するとともに,より大規模な解析対象に対して最大20時間程度で解析結果が得られることを確認した. (3)開発されたシミュレータを使用して戸建住宅および一般的なオフィス環境において,IEEE802.11n規格に基づく市販の2.4/5GHz帯デュアルバンド無線LANシステムを利用した屋内伝搬特性の数値解析を行った.数値シミュレーションでは,空間分解能5mmとして,構造物および什器等の伝搬環境の数値モデル化を行った.これら数値モデルを利用して得られた電界強度分布(RSSI)に関する数値解析結果と実験結果を比較検討し,周波数2.4GHz帯と同様に5GHz帯においても両者がよく一致することを確認した. (4)最後に,3年間の研究において得られた成果と残された課題についてまとめを行った.
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