近年、情報処理システムやネットワークは、ますます多くの独立したユーザが共用するようになってきている。つまり、ネットワークやシステムに、独立したエージェントが多数存在する。各ユーザがシステム内に共存し、(ゲーム理論における各プレーヤのように)資源を競い合う状況は、ゲーム理論的な観点から論じることができる。各ユーザが、独立に自己に関わるパケット/計算のみの処理コスト/応答時間を追究する状況を独立分散管理ということにする。独立分散管理はある種の公平さをもたらすが、全ユーザに性能劣化をもたらすことがあり得る。全ユーザに性能劣化をもたらさず独立分散管理による公平さを反映した資源割り当て法を、ゲーム理論に基づき追究するのが本研究の主な目的である。 今年度は、前々年度に追究を深めた、独立分散管理による、各ユーザ間の公平さを実現しながら、効率の良い、新しい管理方式の一般的追究をさらに試みた。そのような方式の実現可能性について、できるだけ一般的な検討を目論見た。さらに、この方式が各種の具体的なシステムにおいてどのように現実的に実現されるべきかの検討を試みた。 また、例年に引き続き、基礎的な追究にエネルギーを割くとともに、基礎的な研究に裏打ちされた準備的な検討をさらに進めた。あわせて、上述したネットワ-クやシステム等において、以前から問題とされている、独立分散管理による性能劣化が、いかなる状況で起こる可能性があるかを、さらに深めた。このために、ゲームの理論等の検討を背景にしながら、異常な振る舞いや非効率なシステム状態をさらに具体的に追究した。また、分散システムにおけるパラドックスの大きさの、対称性の影響について、検討を深めた。 さらに、数理経済学において、完全競争がPareto効率をもたらすことが示されているので、それを参考にして、競争的公平さを持つ効率的システムの実現方式の追究の準備をした。
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