近未来の広域通信における利用環境の変化に適応的なネットワークの構築法として、人口密度に比例した現実的なアクセス要求に従った基地局ノードの配置、自律分散処理に基づく効率的なルーティングと悪意な攻撃等に対しても結合耐性を強化できる障害回避戦略、渋滞発生メカニズムの解明とその解消策を探り、具体的アルゴリズムを開発することは重要課題である。今年度は、提案した地理的空間上のネットワーク構築法におけるトラフック特性として、平均経路長やパケット転送負荷を調べ、主に以下の成果を得た。また、関連する研究動向を学術雑誌の解説記事にまとめた。 ・統計データに基づく人口密度に比例して、正三角形や正方形の自己相似な分割を繰り返して成長するネットワークにおいて、各ノードの管轄領域内の人口に比例したパケット送受信要求が(ノードやリンクへの)負荷の集中にどう影響するかを明らかにした(国際会議発表)。 ・既存モデルの拡張版である、リンク長や中継数を最小にする種々の最適化基準による優先的選択に従ったネットワーク構築法と比較して、上記のネットワークはより短い平均経路長で、一部分のノードやリンクへの過剰な負荷集中がさけられる等で優位となることを示した(投稿中)。 ・インターネット接続関係の実測データに基づいて、種々のノード攻撃に対する結合耐性を調べ、通信機能を維持するための対処策として提案したリンク張替法の効果を検討した(国内外の研究発表)。 独自開発中の複雑ネットワークに適した分析ツールの整備に関しては、Javaのバージョンアップに伴う基本部分の修正がかなり広範囲に及んだ為に、当初予定していたパケットダイナミクスの解析まで至らずに結合耐性やトポロジー指標の分析に関する部分に留まった。また、ノード数等の大規模化によるメモリ消費で分散処理が余り効果的でないことも判明した為、JavaRMIプログラミングの計画変更も行った。
|