近未来の広域通信で予想されるスケーラブルに増大する利用状況に適応的なネットワークの構築法として、人口密度に比例した現実的なアクセス要求に従った基地局ノードの配置、自律分散処理に基づく効率的なルーティング、悪意な攻撃等に対しても結合耐性を強化できる障害回避戦略、渋滞発生メカニズムの解明とその解消策を探り、具体的アルゴリズムを開発することは重要課題である。昨年度までの3年間で、再帰的面分割に基づく提案モデルの基本特性として、人口密度に応じたノード配置、故障や攻撃に強い結合耐性、直線の高々2倍で抑えられる短い経路長などの優れた性質を明らかにすると共に、短いリンクが主流で経済的なリンク長分布や最大負荷のスケーリング則等を定量的に示した。また、インターネットなど広く現実のネットワークに潜むScale-Free(SF)構造上で、局所情報である次数のべき乗に比例して隣接ノードを選ぶ確率的ルーティングのトラフィック特性を解析し、渋滞解消に適したパラメータ値やルーティング戦略も把握した。最終年度である本年にはさらに以下の成果が得られた。 ・辺上の二等分から任意の点で分割可能とするより現実的なモデルとして、自己相似な正方形の再帰的面分割を長方形に拡張し、その面積分布を解析的に示した(国際会議1件:企画提案、国際学術雑誌1件)。 ・上記の長方形分割に基づくネットワーク上の乱歩が、生物の最適餌探索と類似する移動距離分布を示す事を発見し、優れた探索効率を持つ基本特性を明らかにした(国際会議1件、招待講演を含めた国内研究発表)。 ・SF以外の種々のネットワークに対するOnion-like構造による頑健性:結合耐性の向上や、都市道路網の実データにおける面積分布の対数正規性を数値実験より得た(国内研究発表)。
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