平成21年度は、ビーコン送信周期の動的制御手法について研究を進めた。ITSにおける車車間通信ではビーコンにより自車両の情報を近隣車両に伝達することが想定されているが、近隣車両の増加に伴う通信トラヒックの増加が問題である。そこで、ビーコン送信周期を動的に変更する際の条件を検討し、具体的なビーコン送信周期制御手法を設計し、計算機シミュレーションによってその有効性を評価した。また、典型的な道路モデルや隊列走行を想定した条件ベースの情報転送手法、信号による交通の変化の通信への影響についても検討した。文献調査等を通して、既存の車車間通信プロトコル、評価のための交通モデル、ビーコン送信やパケット転送の条件、評価方法と評価項目等について整理した。 これらの検討の結果に基づいて、車速と加速度に応じてビーコン送信周期を変化させる制御手法を提案した。単純なビーコン送信では、概ね100msecの一定周期でのビーコン送信が想定されているため、これを基準周期とした。提案方式では、ある速度(基準速度)以上ではビーコン送信周期を基準周期とし、基準速度以下では、ビーコン周期の間に走行する距離を基準速度で走行した場合と等しくなるように、ビーコン送信周期を制御する。 提案のビーコン送信周期制御手法を評価するために、シミュレーションプログラムを実装し、シミュレーション実験を行った。提案手法と条件ベースの車車間通信手法の組合せを、一定周期のビーコン送信と既存プロトコル(AODV、GPSR)との組合せと比較し、トラヒック量を抑制とパケット到着率の観点から有効性を確認した。
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