本研究では、自然物や自然現象のような複雑で微細な形状と動きを伴う対象物に対して、対象物を周囲から撮影する複数の内向きカメラ(対象物カメラ)と対象物付近から周囲を見渡す全周背景を撮影する外向きカメラ(背景カメラ)の2系統のカメラ群を利用し、対象物を自由な視点位置から見た自由視点映像を高品質かつリアルタイムで合成する新たなビデオベースCG技術を開発する。 平成21年度は、「対象物フレーム画像ごとの対象物領域の抽出と対象物RGBα画像の生成」のため、次の3つの実現を目的とした:(1)背景カメラによる全周背景フレーム画像を利用して各対象物カメラによる対象物フレーム画像に対応する背景フレーム画像を求める。(2)求められた背景フレーム画像を利用して対象物フレーム画像上で対象物領域を背景領域から自動的に分離抽出する。(3)抽出した対象物領域へのαマッティングにより対象物RGBα画像を生成する。(1)については、当初、背景カメラとして360度のシームレスなパノラマ映像を一度に撮影可能な全方向ビデオカメラを使用する予定であったが、予算減額のため、通常のビデオカメラを複数台組み合わせて精度の高い全周背景パノラマ映像を生成する技術を検討し、プログラム実装と実験を行った。(2)と(3)については、(1)の技術開発の完成後の背景フレーム画像の利用も考慮しながら、焦平面を利用した効率的な対象物の位置推定による方法ならびにαマッティング法を検討し、プログラム実装と実験を行った。 また、当初、平成22、23年度の実施予定であった「対象物RGBα画像群からの自由視点フレーム画像の生成」にも一部着手し、レイベースサンプリングによるボクセル視体積モデルのα値推定法、ならびに、複数LDIを利用したα値付き点群の効率的なスプラッティング法を検討し、プログラム実装と実験を行った。さらに、自由視点フレーム画像の品質向上を目的とした、撮影ビデオ映像と仮想CG映像の融合手法の一つとして、テクスチャ合成を用いた複数カメラ画像からの高品質ボクセルモデルの構築法を検討し、プログラム実装と実験を行った。
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