研究課題
本研究では、自然物や自然現象のような複雑で微細な形状と動きを伴う対象物に対して、対象物を周囲から撮影する複数の内向きカメラ(対象物カメラ)と対象物付近から周囲を見渡す全周背景を撮影する外向きカメラ(背景カメラ)の2系統のカメラ群を利用し、対象物を自由な視点位置から見た自由視点映像を高品質かつリアルタイムで合成する新たなビデオベースCG技術を開発する。平成23年度は、本研究で実施を計画している[処理1]対象物フレーム画像ごとの対象物領域の抽出と対象物RGBα画像の生成[処理2]対象物RGBα画像群からの自由視点フレーム画像の生成のうち、それぞれ、下記の内容を実施した。[処理1]では、前年度までに開発中の複数カメラ映像を合成して全周背景パノラマ映像を生成する技術を再検討した。そして、2系統のカメラ群による全周撮影のための基礎技術として、1台の対象物カメラと3台の背景カメラを用いた環境下で2つの技術(方法1:背景合成映像との背景差分による方法、方法2:背景映像ごとの背景差分による方法)を開発した。実験により、方法2が良好に対象物フレーム画像から対象物領域を抽出することが確認された。[処理2]では、自由視点フレーム画像の品質向上を目的として前年度までに開発中のボクセルモデルとテクスチャ合成を用いた高品質な自由視点画像の生成法について、PatchMatch法による品質と速度の改善技術を開発した。また、前年度までに開発中のビジュアルハルの自由視点映像をグラフィックライブラリにより高速表示する技術の改善を進めた。両技術とも、今後のさらなる改善の余地はあるが、ともに良好な結果が得られた。本研究の最終年度であったが、最終目標である2系統のカメラ群による全周撮影への拡張、ならびに、αマッティングによる対象物RGBα画像の生成とそれを用いた自由視点フレーム画像の生成には至らなかった。
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芸術科学会論文誌
巻: Vo1.10,No.4 ページ: 263-275