平成23年度は研究課題の最終年度であり、平成21・22年度の研究を踏まえて研究の推進を図った。その結果、一定の進展は得られたが、その一方で、「研究の目的」や「研究実施計画」に掲げた目標を十分に実現するには至らず、現在もそれに向けて研究を進めているところである。 具体的な研究成果として、これまで表層的な音列パターンの分類・整理とそれを網羅的に抽出するシステム、楽曲のパート分離を行うシステム、楽節などの単位に分割するシステムを、研究課題で目標とするシステム全体の部分機能として実現してきた。それらを踏まえて、平成23年度は変奏曲の階層構造を解析し、中核となる構造音を抽出する手法についての研究をさらに進め、その実現システムの開発に取り組んだ。これについては、単旋律レベルでの簡単な対象については構造解析を実現し、それに基づく構造音列のパターン抽出も実現している。その一方、より一般的で複雑な変奏曲に対する構造解析については、解析のための理論的な枠組は策定したものの、処理が複雑になるため、これを実現するシステムの作成には至っておらず、全体としての成果も実用レベルにはまだ達していない。システムの実現方法や実現に向けての見通しは一応得られているので、それに沿っての研究をさらに進めていく。また全体的な成果とは別に、人間に気づきにくい共通パターンが抽出されるなど、変奏曲の楽曲解析について一定の成果は得られている。 研究発表については、このような研究上の遅れとともに、発表を目指した学会等の申込期日や開催日程が合わなかったため、平成23年度中には研究発表をするに至らなかった。これについては今後に順次学会発表や論文執筆を行っていく予定である。
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