研究概要 |
平成22年度は,移動体が道路地図データを有するモデル(リッチクライアントモデル)に関する前年度の研究を深め,併せて道路地図データを持たないモデル(シンクライアントモデル)に関する研究に着手した.後者のモデルでは,道路地図をサーバが要求に応じてクライアントに送出する必要があり,そのデータ量削減の為データ圧縮が必要となる.その際に,道路形状の正確さが損なわれる為,マップマッチング方式を頑健なものに改良した.また,シンクライアントの為のモデルを構築し,実際の移動経路を用いた評価実験を行った.道路網上での推測航法(従来方式い)を比較対象として,提案方式との比較の結果,同じ精度での追跡を行う際に,提案方式で必要となるデータ転送量は従来方式の3分の1程度に抑えられることを確認した.また,前年度から研究しているリッチクライアントモデルに関しては,国際会議(DASFAA2011)に採択され,発表した. 移動体へのLBS(位置に関連した情報サービス)提供の為のPOI(ホテル,レストランなど,検索対象となる点)探索方式として,多数の目的地を同時に探索するA*アルゴリズム(SSMTA*)を開発し,その評価を行った.1つの現在位置から多数のPOI候補に対して同時に探索を開始し,それぞれのPOIへの最短経路を求める演算は,多くのLBSの為の基礎演算である.それを実現するためには,目的地を定めないDijkstra法,1つの目的地を用いるA*アルゴリズムなどがあるが,それらは探索するPOI(目的地)が多数の場合やPOI分布に偏りがある場合に検索効率が低下する.その状況に適するアルゴリズムとしてSSMTA*を提案し,ANN(aggregate nearest neighbor)探索へ適用した結果,従来方式に比して大幅な効率向上が図られた.
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