研究概要 |
平成21年度は粒子の包絡形状をグラフィックスハードウェアを用いて高速に算出する手法を開発した.この手法を用いて積雪形状の生成手法や,弾性体の骨格による変形の際に体積を維持する手法を開発した.積雪形状の生成では,シーン中の各領域に雪が到達可能か否かを,シャドウマッピングの技法により判定する手法を考案した. シャドウマッピングは本来光線に対して適用される手法だが,降下する雪は光線とは異なり,気流の影響等により不規則な挙動を伴う.このため,本手法では複数の方向からシャドウマップを求め,それらを合成して各領域における雪の到達確率を求める手法を考案した. 次に,粒子堆積モデルにもとづく積雪形状の安定化処理を実装し,積雪のなだらかな表面形状の算出を行った.これはハイトマップと呼ぶ画像として得ることとし,最終的な積雪景観の表示を行うために,このテクスチャを用いてポリゴンを変形し,もとのシーンとの合成を行った. また,骨格による変形の際に体積を維持する手法は,変形を行う対象形状の内部に粒子を充填し,それらに骨格の変形に伴う作用力を与えた後,粒子同士の相互作用力を均衡させることにより各粒子の配置を求める.この粒子の配置から元の形状の外形を求めることにより,骨格による変形後の対象形状を得る. この手法により,対象形状の変形の際の形状の収縮を避けることができ,体積を維持した変形を行うことが可能になった. 本研究では対象を粒子でモデル化することにより,積雪形状や弾性体のような不定形のものの形状を効率よく算出することが可能になることを示した.またこの手法はグラフィックスハードウェアの機能を用いて高速化することができ,対話的な応用に利用できる速度を得ることができる.これにより,積雪形状のほか,粉体による成型のシミュレーションや,弾性体の変形シミュレーションを対話的に行うことができる.
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