研究概要 |
図書館の子ども室にブラウズリーダを設置して実現する「新読書環境」では,子どもたちは,(i)家族や友達と一緒に,(ii)冊子体絵本とウェブ絵本との違いを気にせず,かつ(iii)ブラウジング主体で,多数の中から望むものを探し出し絵本を読める。本年度は次の事柄に重点を置き研究を進めた(ウェブ絵本:ウェブ上に公開されている電子絵本)。 (1)ブラウズリーダの複数図書館での利用と評価 昨年度に加えて今年度は,大分市民図書館,別府市立図書館,由布市立図書館および宇佐市民図書館のこども室に改良版ブラウズリーダを設置し,新環境が子どもたちの絵本の読書活動を活発化するのに役立つかどうかを調べた。全般的には期待した結果が得られたが,ブラウズリーダの利用頻度は公共図書館の立地条件に大きく依存することもわかった(例えば,宇佐市民図書館では,子どもたちは新しいものの利用に抵抗を感じている様子だった)。 (2)ブックリーダの改良 ブラウズリーダは,機能的にみると,シェルフブラウザとブックリーダとからなる。ブックリーダを使うと,日頃はウェブブラウザで読んでいる種々のウェブ絵本が,冊子体絵本のように読めるようになる。ただし,今どのあたりを読んでいるかを捉えることができなかったり,捉えられても直観的でなかったりするという欠点は解消できない。読んでいる箇所が特定できなければ,子どもたちがウェブ絵本を実際に読んだかどうかの正しい判断ができなくなってしまう。これに対処するため,本年度は,ブックリーダにページめくり判断機構を組み込んだ。原理は,全てのウェブ絵本のページごとの画像特徴を(著作権を侵害しない形で)保存しておき,ウェブ絵本がアクセスされるたびに,子どもたちのページめくり動作を,画像特徴を使った動的計画法に基づき推定するというものである。この機構の性能評価を30冊のウェブ絵本を対象に行ったところ,100%の精度であった。 今後は,公共図書館の利用者が著者であるような絵本を多数創作する活動に繋げ,これらの電子化版をブラウズリーダに蓄積することで地域文化遺産の一つとしての「大分絵本百科」を実現する。また,ブラウズリーダをネットワークで繋げ,サーバを介して大分絵本百科を世界に発信したい。
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