平成22年度までに構築・開発してきたデータと基本技術に基づき以下の研究開発を行った。 日本語学習・運用のための対話例の活用をさらに発展させるため、本研究課題以外に様々な団体が収集した目的別日本語例文データが整備・蓄積されてきたことも視野に入れ、本研究課題以外で作成されたデータを対象としても研究開発してきた支援技術が適応可能なように技術の拡張・改良を進めた。具体的には、より多様な日本語表現や文体に対応させる技術の頑健化のため、処理の前提となる知識表現と辞書を精緻化した。また、今後、他ドメインの日本語教育教材作成にも柔軟に対応できるよう、本研究課題で開発したデータ化の方法や技術を、言語処理学・日本語教育学の視点から理論的に整備・検討し、処理技術のモジュール化を進めた。それらソフトウェアの実装は、携帯端末などの多様な利用環境に対応できるようWebサービス化を進めた。 対話例の蓄積に関しては前年度までの蓄積例文および語彙を再検討し、医療福祉分野に携わる外国人への日本語教育経験を持つ複数の日本語教師からの意見を得て、研究開発した支援技術を用いて効率的に言語資源データを整理した。また、このデータを利用するための技術も、上記のように多様な表現に対応できるよう研究開発を行っただけではなく、日本語教師の意見を参考に計算機で処理できる文法パターンを学習文法に適した形にするといった質的な改良も行った。その結果、計算機処理モジュールに基づいた問題集作成、あいまい検索、文の多様性分析などの各種機能を実現することができた。また、日本語教育の実務者との連携を広げていくため、関連する学術集会で研究成果を報告するとともに、本研究課題で試作した対話例集と試作システムを公開するワークショップを企画・運営して本研究課題の成果の共有に努めた。
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