研究課題
平成23年度は、展示空間での体験をモニタリングするシステムから得られたデータを分析する作業を行い、モニタリングの有効性を確認した。具体的には昨年度行った「これも自分とみとめざるを得ない展」で展示した「属性のゲート」で、鑑賞者の挙動データを収集して分析した。この展示の鑑賞者は、最初に男性または女性のゲートを選んで前に立つが、実際にはシステムが顔認識で判断した方のゲートが開き、鑑賞者はそちらから出る。次に29歳以下または30歳以上のゲートのどちらかを選んで前に立つが、やはり顔認識の結果で開いた方から出る。最後に笑顔または無表情のゲートを選ぶが、開いた方から出る。分析の結果、システムの顔認識の結果が鑑賞者のゲートの選択に影響のあることがわかった。例えば30歳以上のゲートの前に立った鑑賞者のうちの61.6%は、システムによって29歳以下と判断されている。これらの鑑賞者の76.1%が笑顔のゲートに進んだが、この割合は鑑賞者全体のうち笑顔のゲートを選んだ57.5%よりも高い。このことは、29歳以下と判断されたことが鑑賞者の感情に影響して、笑顔のゲートを選ぶ上でプラスに働いていると考えられる。データ分析に当たっては、鑑賞者が想定外の動きをすることがあるという展示特有の問題に対応するため、手作業でも効率よくデータの不備の発見や順番の入れ替えが行えるブラウザを開発した。このようにして得られる鑑賞者の挙動は、展示の計画や改良に具体的な指針を与えるものである。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件)
映像情報メディア学会誌
巻: Vol.65, No.8 ページ: 63-67