研究概要 |
本研究は,空間への自然な3D像の描画により,実際と同様な高度なコミュニケーション環境を実現するための重要なキー技術を確立することを目的とし,空間3D像の描画を高速な液日可変焦点レンズをキーデバイスとして用いて行うことを特徴とする.今年度は,可変焦点レンズの特性把握として,1.焦点距離変化の特性把握,2.歪み特性の把握を行った.また,情報量増加の抑制のために,3.積層枚数を減らした場合における観察位置の制限に関して検討を開始した. 1. 可変焦点レンズへの印加電圧の大きさを変化させ,焦点距離の変化特性を把握した.その結果,印加電圧の大きさが増大するのに伴って,結像位置の変化が急峻になることが分かった.このため,結像位置の変化しない領域が,電圧が大きくなるに従って,増大する.そこで,3D表示を行う上で,結像位置の変化しない領域を少なくする方が良いという立場に立てば,電圧は大きければよいということではなく,最適な電圧があることが分かった.また,描画する周波数を上げたい場合には,電圧を増大することにより可能となることが実証できた. 2. 結像特性として,液晶可変焦点レンズによる歪曲収差を把握した.その結果,結像位置によらず,樽型の歪曲収差が発生していることが分かった.また,可変焦点レンズによる歪曲収差は比較的小さいことが明らかとなった.ここで,通常レンズの歪曲収差と異なり,可変焦点レンズの歪曲収差は,光軸に対して必ずしも回転対称ではないことから,可変焦点レンズにおける液晶の配向方向が影響を与えていることが考えられる. 3. 観察位置の制限に関して,静止画を多数枚積層した心理評価実験系を構築し,積層枚数と制限範囲の把握に関する検討を開始した.現状では,積層枚数が少ない場合には,輝度やテクスチャのブレンドを行わないと観察位置に対する制限が強く,現実的ではないことが確認できた.
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