ディスプレイの動き、スクロール方法、身体運動等をコントロールして、従来報告されていなかった知覚現象の確認を行うことが本研究の目的である。現在までの主な進捗は以下の3点である。 (1)横スクロール文字の認識効率のyaw身体回転への方向依存性(特許出願1件、口頭発表1件) 前額平行面上に設置したディスプレイに、認識困難な速度で右から左へスクロールする数字を提示する。その環境を保持した状態で、スクロールの方向と反対方向へ身体がyawの回転運動をすると、数字の認識が容易となることを確認した。11名の被験者の実験を行った結果、身体回転の方向に応じて認識効率が変化したにも関わらず、眼球運動に変化は見られなかった。本現象は、網膜像の差異では説明できず、注意などの高次認識機能が関係している可能性が示唆された。 (2)色相回転法による2色覚補助(国際会議発表1件(査読有り)) 赤と緑の識別が困難な色弱者(2色覚者)は、男子人口の約5%と推定されており、決して少ない比率ではない。従来から色覚補助ツールは数多く考案されているが、2色覚者に3色覚者の色対比の感性を伝えることは困難であった。 そこで、本研究では、3色覚者が主として利用している「赤-青緑」の色対比を、2色覚者が知覚し易い「黄-青」の色対比に変換し、原画像と変換画像とを任意のタイミングで「動的に」切り替えて表示する手法を考案した。評価実験の結果、色対比の感性を含めて効果的な補助が可能であることを確認した。 (3)ADサイマル放送におけるアスペクト変化に伴う構図と画質の関係(口頭発表1件) 現在、モバイル放送や地上波デジタルなど、同一コンテンツを制作者の意図とは異なるアスペクト比で視聴する機会が増えている。そこで、視聴者が構図から受ける印象の変化について検討した。画面構成に時間的変化のない静止画と変化のある動画では劣化傾向が異なることなどを明らかにした。
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