本課題では空中に書かれた見えない文字パターンが「何の文字であるか」を認識する技術と、「どのような筆順や字形で書かれたか」を評価する技術の開発を行った。 1) 空中手書き文字データの収集・整備 3軸の加速度センサおよびジャイロセンサを内蔵したリモコンを用いて空中で書いた文字のサンプルを収集した。収集したデータは、ボタン操作を行わずに空中で一筆書きする動作の時系列信号である。個人性を分析するため、筆記者4名から、各々、ひらがな71文字×20回のサンプルを収集した。 2) 空中手書き文字の個人性の分析と正規化による認識評価 時系列信号を隠れマルコフモデルで学習し、特定筆記者および不特定筆記者の認識評価を行った。特定筆記者の場合には92.8%の高い認識率が得られたことに対して、不特定筆記者では45.0%の認識率であった。そこで、文字を書く勢いとして平均加速度を、文字の大きさとして外接矩形面積を筆記者の個人性として抽出し、これらを正規化することで、最大75.2%まで認識率を改善した。 3) 字形評価法・筆順評価法の検討 ペンタブレットで収集した手書き文字を用いて、筆順および字形の評価を行った。筆順の評価では漢字の字体構造を利用したネットワーク探索により、続け字を含む走り書き文字の筆順探索成功率を改善した。字形の評価では特徴量の依存関係を分析したベイジアンネットワークを用いて、字形の崩れを判定し、その原因を推論する手法を考案した。
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