本課題では空中に書かれた見えない文字パターンが「何の文字であるか」を認識する技術と、「どのような筆順や字形で書かれたか」を評価する技術の開発を行った。 1)空中手書き入力デバイスの試作と文字データの収集・整備 3軸の加速度センサおよびジャイロセンサを内蔵したリモコンを用いて空中で書いた文字のサンプルを収集した。筆記具の向きや持ち方に依存しない手書き文字認識システムの開発を目的として、壁向き、床向き、天井向きなどの様々な姿勢で書いた文字サンプルや筆記中に筆記具の回転を伴った文字サンプルを収集した。 2)空中手書き文字の変形要因・個人性の分析 筆記する向き(壁向き、床向きなど)が異なる3軸加速度信号を可視化し、空中での筆跡の変形要因を分析した。その結果から、筆記面を主成分分析によって推定し、筆記する向きに依存しない特徴抽出法を考案した。また、3軸角速度信号より、筆記中の筆記具の回転を伴う個人性を分析した。 3)不特定筆記者の空中手書き文字認識器の開発・評価 筆記動作の時系列信号を隠れマルコフモデルで学習し、筆記面に依存しない空中手書き文字、あるいは筆記具の回転を伴った空中手書き文字の認識を行った。筆記する向きの変動については、学習サンプルに含まれる筆記方向に対して87.8%の認識率が、また、含まれない筆記方向に対しても81.7%の認識率が得られた。筆記中の筆記具の回転については、角速度情報を元に筆記具の加速度の向きを実空間の座標系に変換することで認識率の向上を図った。
|