研究概要 |
対戦型思考ゲームをプレイする際には,プレーヤは相手の着手からその意図や戦略を見い出し,それに応えて着手を行なっている.囲碁が別名「手談」とも呼ばれているように,対局は着手を通じたコミュニケーションであると考えることができる.本研究は,思考ゲームの中でも特に囲碁を対象としてゲームと言語との関わりを明らかにすることを目的としている.一局のゲームは棋譜を用いて記述され,棋譜中には石の配石などの静的局面情報や着手系列によって局面がどのように変化していったかなどのゲームの進行に関する情報が全て含まれている.棋譜は,個々の着手が符号化されたテキストであるとみなすことができるので,その棋譜テキストに対して適切な言語モデルを作成することが本研究の課題の一つである.囲碁では,個々の石には先験的な役割がなく,周辺の状況や局面の進行状況に応じて石の役割が定まるため,(1)着点の盤面上の絶対位置,(2)直前の相手方の着手と現在の着手との位置関係,(3)着点の周囲の配石状況の3つの観点から着手を特徴づけて符号化し,棋譜テキストを構成した.本年度は,前年度に作成したn-gramに基づく確率言語的モデルを用いた着手予測結果と,モンテカルロシミュレーションに基づく局面評価結果を対照させ,観戦記の付随する棋譜中の個々の着手の分類を行なった.その結果,局面評価値が高く,かつ,予測順位の低い着手が,観戦記において好手とされている傾向が強いことがわかった.また,組合せゲーム理論に基づく局面の数理的解析として,複数の対象からなる複合的な攻合い局面を記述するために,AND/OR結合を導入して組合せゲームを拡張することを提案した
|