研究概要 |
本研究では,日独の共同研究を基盤に,コミュニケーションにおける社会・文化的な要因を工学的アプローチにより定量的にモデル化し,会話エージェントシステムとして実装することを目的とする.各課題項目について,22年度の成果を以下に示す. (1) 社会・文化的特徴と非言語行動を関連付けるモデルの確立:22年度は社会的立場の違う者同士の会話における姿勢の違いについてベイジアンネットワークを用いたモデルを確立した.本モデルは,Hofstedeによる5つの文化的要因に加え,社会心理学研究から得られた知見により,社会的関係の要因を4種類追加したネットワークである. (2) 日独でのコミュニケーション体験システムのプロトタイプの開発:アウグスブルグ大学で開発されているBearGardenをキャラクタアニメーションの実行環境として共通に利用し,プロトタイプシステムの開発に向けてプラットフォームづくりを行った. (3) 日独共同評価実験の実施:22年度はドイツ側で進められている,文化による好まれる会話内容の違いについての実験を共同で行った.本研究はエージェント研究の最高峰の国際会議であるAAMAS2011に採録が決定した. (4) 複数言語・文化への適用:2010年9月よりEU FP7プロジェクトeCUTEにプロジェクトメンバとして参加し,異文化理解のための教材となりうるエージェントシステムの開発,ヨーロッパと日本での評価実験を行うためのコンテンツの考案に取り組んでいる.本プロジェクトはイギリス,ドイツ,オランダ,ポルトガル,日本(京大,成蹊大)の研究機関が参加している. (5) マルチモーダルコーパスの収集・整備:これまで進めてきた姿勢の分析に加え,22年度はうなづきと微笑みといった頭部動作や表情の非言語行動を分析し,コーパスの充実を図った.
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