研究概要 |
本年度は,センサデータからの行動分析の基礎技術の検討と,提案手法の予備実験を実施した.具体的には加速度センサから,センサを装着している対象物(具体的には幼児)の行動のデータを取得しそれを用いてクラスタリングを行い,子どもの交友関係を抽出することを試みた.抽出方法として,「交友関係が深い子ども同士はよく似た行動をする」という仮定を設け,センサから得られたデータに対してクラスタリングを行い,よく似た行動を示した子どもをグルーピングし,それから子どもの交友関係を推測する方法を提案した.また交友関係の解析結果は1日分では精度が不十分である.そこで複数日の交友関係データを利用するために,どれだけの異なったグループに所属していたかということと,一組のペアが何日ぐらい一緒に遊んだかということをベースとする,交友関係の広さと深さという概念を提案し,センサから得られる交友関係データから,広さと深さを計算する手法を検討した.提案手法の有効性を確認するために,大阪府下の幼稚園で10日ずつ2回,合計20日間のデータを収集する実証実験をおこない,提案手法が有効であることを確認することが出来た.この実証実験で,提案手法を用いた結果と,現場の保育士の観察結果がほぼ一致することが明らかになった,これによって.センサデータを用いて,子どもの交友関係を推測する手法の基礎技術がほば確立した.本年度の成果は次年度以降の計画実施の"かなめ"となる成果の一つである.さらに,本研究計画で予定している国際比較の実施のために,フィンランドのオウル大学と連携することとし,2009年8月に研究代表者がフィンランドを訪れ,同大学の研究者と共同研究を実施することで合意した. これによって,国際比較の実施に向けた準備が大きく前進した.
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