研究概要 |
推薦システム(recommender system)は,利用者の好むであろうアイテムや情報を予測し,それを利用者に提示するシステムであり,現在では,電子商取引サイトなどで幅広く利用されている. しかし,依然としていくつかの重大な問題が残っている.その一つがスタートアップ問題である[1,2].推薦システムでは,利用者のいろいろなアイテムへの好みを提示した嗜好データを収集して推薦する.しかし,利用者が使い始めの時期には,嗜好データがまだ十分ではなく,適切な推薦ができない.新規アイテムについても,登場当初では情報が不足している. この問題への対処として,同じシステムを利用している利用者だけではなく,他のシステムを利用している利用者の情報を再利用することで,初期の情報不足の問題に対処する方法について研究する.しかし,同じシステムを利用している利用者間では,利用目的や,配布されるアイテム・情報の共通性から,等質な情報が得られる.ところが,他のシステムでは整合性は低いため,そうした情報を活用するための枠組みである転移学習によりスタートアップ問題に対処する. 本年度は,生成モデルに基づく方法と,アンサンブル学習を行う方法を対象にプロトタイプの実装を行った.生成モデルに基づく方法は,階層型ベイズのアイデアと,代表的なpLSAを使った協調フィルタリングを組み合わせたものである.残念ながら,この方法では,顕著なスタートアップ問題の改善は見られなかった.もう一方のアンサンブル学習を用いた方法の改良も行った.協調タグ付けシステムのタグ推薦というタスクに対し,有効な結果を得た.これらの結果をふまえ,来年度以降は,アンサンブル学習を用いた方法に重点をおきたいと考えている.
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