研究概要 |
推薦システム(recommender system)は,利用者の好むであろうアイテムや情報を予測し,それを利用者に提示するシステムである. このシステムの問題の一つに,スタートアップ問題がある.推薦システムでは、利用者のいろいろなアイテムへの好みを提示した嗜好データを収集し,そのデータから,利用者の好みに合致したアイテムを推薦する.しかし,利用者が使い始めの時期には.嗜好データがまだ十分に集積されていないため,好みのパターンを正確に把握できず,適切な推薦ができない. このスタートアップ問題に対処するため帰納転移や転移学習と呼ばれる技術を導入する.これは,これから解こうとする目標タスクに専用のデータが少ないので,類似した問題のデータを転用して目標タスク予測精度を向上させるものである.ここでは,内容ベースで他人のデータを,協調フィルタリングでは他のシステムのデータを転用することで精度向上をめざす. 本研究では.TrBagg法とよぶ転移学習手法を開発した.TrBagg法は,他の利用者のデータから幾つもの予測器を作り出し.その後,目的の利用者にあったものを,目的利用者用のデータを用いて撰び出す.ここで.従来は,各予測器を個別に取捨選択していたが.TrBagg法では,予測器の集合全体での良さを考慮するようにすることで,負の転移問題が生じる現象を減らすことに成功した. 本年度は,パラメータの特性の分析など,アルゴリズムの詳細部分の改良を行った.
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