研究課題
物質構造を情報理論の枠組みで扱うためには、体積有限の非負の実関数に関する情報測度(情報量)の定式化が必要となる。先行研究において、情報理論的尺度の位相問題への導入を行っているが、関数の更新幅が十分に小さいという条件の元での証明に留まっていた。そこで、実空間上で定義されるノルム有界な関数空間と、それらのフーリエ変換によって得られる可積分な複素関数全体によって構成されるフーリエ空間上の関数空間を定義する。その上で、情報理論的尺度として導入した2関数間の情報量を両空間に導入し、それらをラグランジェ形式に基づいてまとめた。まず、空間ノルムに自乗計算を与えた関数空間に基づいて、情報量測度によるラグランジェ形式を定ある。そして、R-ファクターを増加させる更新方向の逆を求める問題を設定することで、既存のError Reductionによる位相回復法(ER)に一致することを示した。その導出過程には、情報量最小化などの情報理論の知見を多く導入している。さらに、得られる解集合の関数空間における構造について、数理研究のたあの計算機実験を行った。具体的には、実空間と逆空間の両拘束条件を満たす解がない場合、つまり、R-ファクターが十分小さくなり得ない場合の位相回復アルゴリズムによる関数空間で得られる解構造について調べた。ここでは、電子カウントに基づくポアソンノイズが与える場合に着目した。その結果、解は不定で多くの解による集合が得られるが、拘束条件を満たす解が厳密に存在しない場合、解集合は球核内に非一様に分布し、さらに球核の中央部は空いていることを、多くの数値実験を通じて確かめた。実際の材料からの実験で得られる回折像には、フーリエ強度とは異なる数多くの要素が含まれることが考えられるが、この球核の様相を見出すことで、実験データにおける不定解からの導出手法の理論的検討のための基礎的成果となる。
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International Journal of Information and Management Sciences 21
ページ: 1-11
Journal of the Optical Society of America Vol.27,Iss.5
ページ: 1214-1218
Information Sciences(Elsevier) (Online in press)