研究概要 |
平成22年度までの研究によって,舗装中に設置されたRFIDタグの情報を車側から確実に読み取るためには,アンテナの通信範囲に単一のタグのみが存在することを前提とした読み取りモードを採用する必要があることを明らかにした.このことは,アンテナの読み取り範囲には一枚のタグのみが存在するようにタグを配置する一方で,車両が車線の中のどのような位置を走行しようとタグを読み取れるようにしておく必要があることを意味する. 平成23年度には,まずITS(高度交通システム)において実用化が予定されているさまざまなサービスを取り上げ,必要とされる位置精度を特定した.この結果をもとにして,とくに位置精度に対するリクワイアメントが厳しい「車線逸脱警告サービス」をとりあげ,このサービスを実現するために必要なタグの配置を検討した.「車線逸脱警告サービス」では,ISOによって警告を発するタイミングに関わる標準化が行われている(ISO17361)ので,このISO標準も参考にした. また配置を検討するにあたっては,実際の車線変更時の車両の挙動(とくに,走行軌跡)について知っておく必要があるため,人間生活工学研究センター(HQL)が実車を使って運転時の車両の挙動を計測したデータ(HQL運転行動データ)を取得し,分析に用いた.HQL運転行動データでは,走行速度,加速度,走行位置(GPS座標),車両前方の動画像等が記録されている.この動画像をもとにして右側車線あるいは左側車線に車線変更を行った時のデータを抜き出し,走行軌跡を数値積分によって求めた.この結果,分析に耐えるデータとして,右側車線への車線変更については20人の運転者の31回の車線変更データを,左側車線への車線変更については7人の運転者の10回の車線変更データを得ることができた.車線変更時の走行軌跡によると,車線変更時の走行速度は時速40キロ台から100キロの間に分布しており,走行速度が速くなると車線変更に要する距離も長くなる傾向にあることが判明した.いずれにしても,車線変更時の走行距離が短いほど警告の発出にとっては厳しい条件となる. 車上線変更時の走行軌跡をもとにして,RFIDタグの配置を検討した.配置の検討にあたっては,急な車線変更の場合であっても最低1枚のRFIDタグの上をアンテナが通過することを条件としたが,タグの数を不必要に増やさないよう留意した.なお,車線変更がゆっくりと行われる場合には,複数のタグの上をアンテナが通過することとなり,車線逸脱警告の発出にとっては安全側になる.
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